1~2話完結形式の超緻密ボドゲ漫画
どうも、いなかです。
この記事では、作者・中道裕大のゲッサン少年サンデーコミックス「放課後さいころ倶楽部」について、レビューをまとめます。
未読の方のためにネタバレは極力無し(最低限のあらすじ程度)としています。尚、この記事を書いている時点では8巻まで発売していますが、記事の内容としては1巻中心で、それ以降については「もう少し先にこういう見どころがあるよ」というくらいです。
構成の練りこみ具合に感動すら覚えるレベル
舞台は京都。引っ込み思案な女子高生・ミキと、転校生のアヤは、クラスの委員長・ミドリがボードゲームショップでバイトをしているのを偶然知ってしまいます。それを切っ掛けに、ボードゲームというものの存在を知り、次第にその世界にハマっていく…というストーリー。
と言っても、単に可愛い女子高生がわいわいボドゲやるだけの漫画なら、今の世の中生き残るのは難しかったでしょう。
例えば「ヒカルの碁」は碁の内容・詳細な戦術などはほぼ描かれませんでしたよね。囲碁・将棋は戦術の深さが別格というのもありますが、そっちを丁寧に描いても読者がついてこないのが明らか(作者が描ききれないというのもあると思いますが)なんですよ。
だからゲームの内容については思い切って切り捨てて、ドラマの部分で勝負しています。
ところが、本作品のように、決して一般の認知度が高くないボードゲームをテーマにした場合は、そこまで思い切ったことはできませんよね。キャラクターが何をやっているのかがわからなくなってしまいます。
必然的にゲーム部分も少なからず描かなければいかないわけなんですが、この作品はそこが凄い。ドラマ部分とゲーム部分の融合が本当に素晴らしいんですよ。
一つのエピソード、つまりゲームに掛けられるのは1話か、せいぜい2話。
その間に、エピソードの導入部があり、ゲームの概要があり、ゲーム内でのドラマがあり、最後にエピソードそのもののオチを付ける…という曲芸を毎回やっておられるのです。
コマ割りや説明セリフの内容・量のバランスが本当に絶妙なんですよね。思い切って説明を省いたり、ゲームをやりながら付け加えったり。作者の「なるべく読者に楽しんでもらいながらゲームの雰囲気・楽しさを知ってもらおう」という気持ちが絵からガンガン伝わってきます。
それでいて、作品のテンポは損なっていない。ゲームをやるたびにそのゲームのルール説明をしているのにも関わらず、です。
店長がゲームに参加するときは漏れなく熱戦
作品を縁の下から支えてくれているのが、作中でミキとアヤがボードゲームに触れるきっかけを作ってくれたゲームショップ「さいころ倶楽部」の店長・金城タケル。
筋骨隆々で禿頭の大男、しかも頭には大きなキズ…「シティハンター」で見たことがあるようなお方ですが、人格は至って穏やか。ゲームを心から愛するお人です。
かつては軍人として沖縄基地に駐屯していたという、およそボードゲーム漫画らしからぬ過去も持っており、そこは見た目のイメージそのままとなっております。
まあ、この辺の異色の設定がドラマ部分で効いてきているので、実に設定の作り方が上手いなという感じなのですが。
画像はミキとアヤが初めてショップに行ってゲームをプレイするときに、店長が説明してくれる場面。多くの回で、このように説明役に回ってくれます。
ただ、説明役に留まらず、実際にゲームをプレイしてくれることも多々ありまして、その場合はほぼ熱戦となります。
特に熱いのが2巻で、初めて従軍の過去が明らかになる、いわば店長の過去編とも言うべき回。
テーマとなるゲームはボードゲームの王道「カタン」で、ゲームのチョイスからして作者の力の入れ方がわかりますね。
若かりし頃の店長は、同僚のマイクからボードゲームに誘われて部屋に行くものの、そこにはもう一人、ケンカしたばかりの同僚・ジョージの姿が。
いがみ合う二人は、お互いへの服従を賭けてカタンを始める…という回です。
このカタンでは、プレイヤー同士の交渉が重要になってきます。しかし、ケンカしている状態で交渉などできるわけもなく、そのあたりをジレンマとして上手くゲームとドラマを融合させているんですね。
このジョージはそれからもちょいちょい顔を出してくるんですが、本当に素晴らしい名脇役です。
ドミニオンが扱ってもらえる日は来るのか
わたくしは自分でもいくつかボドゲを持っているんですが、特に「ドミニオン」が好きなんですね。
ドミニオンは拡張セットがいくつも出る人気作なのですが、ルールが複雑なのが漫画向きではないのです…。(カードゲームなのですが、カードごとに能力があり、説明が大変)
放課後さいころ倶楽部は、ミキとアヤが初心者なこともあり、基本的にはシンプルなルールのゲームが中心です。
例えば、最近ジャンプで連載がスタートした「僕たちは勉強ができない」に登場するヒロインの一人、緒方理珠が作中でプレイしていた「ニムト」。ルールがシンプルなせいか、比較的最初の方に扱われていますね。
最近は比較的複雑なルールのゲームをやる回もあるのですが、まだまだ少ないです。ボドゲ版のシヴィライゼーションなどは永久に取り上げられなさそう…。
いつかドミニオン回は来るんですかねえ…。今はネタを温めている最中だと思いたいです…。