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普通に読んでるとどうにも混乱するので、時系列を整理して並べてみた
どうも、いなかです。
この記事では、作者・大月悠祐子のヤングアニマルDensi「ど根性ガエルの娘」について、ネタバレありの考察をまとめます。
ネタバレ無しの記事はこちら。
未読の方は、まずこちらから読むことをおすすめします。
どこまでがどんでん返しなのか?
先日(2017/1/20)公開された15話で大どんでん返しがあった「ど根性ガエルの娘」。具体的には、「一度は崩壊した家族が再生する」話のはずだったのが、「実は今も再生していない」というのが仄めかされたわけですね。
例えば1話のカレーの場面。
直前が、荒んだ父のクズエピソードだったこととの対比により、読者は完全に「すでに再生した家族の場面」だと思っていたわけです。
ところが実際は違ったと。
平和な日常は、あくまで娘が父の望む態度をとった結果だったと。軟化はしたものの、本質的な部分はそのまま、と。今までの事後感たっぷりのエピソードも、別に全然事後じゃなかったというのが示唆されたわけです。
そうすると、どこまでが本当なのか?
それを検証するために、とりあえず作中の出来事を時系列順にまとめてみました。
本当はもっとかっこよく年表っぽい感じにしようとしたんですけど、あまりにも技術的ハードルが高すぎたのと、細かく書くのに逆に向いてないかも、と思ったのもあって、結局テキストベースです…。
ど根性ガエルの娘・年表
○は作中で明るめに描かれているエピソード、●は暗め、▲はどちらの要素もあるエピソードです。
◎昭和45年・父20歳のときにど根性ガエルがヒット ○
◎昭和48年・父23歳で母と付き合う。結婚までの期間については明らかになっていないが、かなり短い交際期間で結婚したと思われる ○
◎昭和49年・ゆうこ誕生
◎昭和50年・やっちん誕生
◎昭和55年・ゆうこ6歳、同級生によくいじめられているなどの嫌なことは、父のコレクションの漫画があれば平気のエピソード ▲
◎昭和57年・ゆうこ8歳。原稿13本落として父失踪(3か月間)● その後、家に帰ってきてからもギャンブル漬けの日々。「壁の穴」のエピソードが作中で語られたのもこの年。
◎昭和58年・ゆうこ9歳。生活が困窮し、母が働きに出る。忙しい中で必死に作った炒飯が、傷んでしまっていたエピソードはこの頃。●
◎昭和60年・ゆうこ11歳。ジャンプのパーティーに呼ばれる。○
母親によってキリスト教の洗礼を受けたのもこの頃?洗礼については、壊れていた母を象徴するかのように描かれていたが、キリスト教に頼ったのはごく短い期間という母の言葉もあり。
◎平成某年の駅清掃員のエピソードはこのあたり?作中ではいい話に描いていますが、娘のサイフ盗んで捨てるのはこのしばらく後だと思われます。○
◎平成2年・ゆうこ16歳。高校の入学金を父に盗まれる ●
「母が壊れている」描写が入るのはこのあたりから。
◎平成3年・ゆうこ17歳。半年振り家族が揃っての一家団欒のエピソード。○
母から「全部あんたのせい」と言われたのはこのあたり?
◎平成5年・ゆうこ19歳。高校卒業後は短大に進学するものの、不眠症に悩まされる。その後は拒食症に。
やっちんが修学旅行で酒飲んで怒られるのはこの年のはず。
また、15話でも特に破壊力があった「家族に土下座」もこの年。体調不良の引き金になった?
その後は拒食症のリバウンドからか、過食症に。
ただ、田中圭一のペンと箸 第八話によると、この頃からど根性ガエルのキャラクターがCMで使われ始め、版権収入を得られるようになり、生活は多少安定してきた模様。お金に関する暗いエピソードもここからは減ってきている。ただ父のギャンブル癖は相変わらずで、入ったら入った分だけ使ってしまうと巻末のインタビューで答えている。
◎平成7年・ゆうこ21歳。短大は卒業するも、就職はせず引きこもりに。●
漫画家になるのが夢、そしてそれを家族からはっきり反対される描写があるのはこのあたりから。しかしこの頃は漫画をあまり描いていない模様。●
◎平成9年・ゆうこ23歳。父から漫画をおすすめされるも既に読んでいたエピソード。この頃には過食は落ち着いた模様で、体型は普通に戻っている。また、ずっと黒髪のロングヘアだったのを明るいボブカットにしている。〇
髪型から、母に腐ったおかずを無理やり食べさせられそうになったのはこの頃と思われる。●
◎平成10年・ゆうこ24歳。2.5次元にハマっていて、バイトで稼いだ金をすべてつぎ込んでいる模様。漫画家は目指しているが、漫画は描いていない。母からは相変わらず反対されていて、一度は漫画をあきらめたとのこと。ただ、陰で弟は応援してくれている。厚化粧で、明るい色のロングヘア。●
◎平成11年・ゆうこ25歳。1話冒頭のこの漫画を象徴するエピソード「締切前にパチンコに行った父(確変中)を見つけ出すものの、理不尽に怒鳴られる」のはこの年。●
たった一年ほどで、驚くほど様子が変わっている。
かなん名義でのデビュー作「Piaキャロットへようこそ!!2」の連載開始がこの年の11月号から。上のコマは恐らくその執筆作業中と思われる。
2巻巻末のインタビューで、「25歳の時、自分はやはり漫画を描くしかないと思った」と語っているが、何かきっかけがあったのかどうかは明らかになっていない。
◎平成12年・ゆうこ26歳。父のカブラペンを全部使ってしまうエピソード。〇
◎平成17年・ゆうこ31歳。母に罵倒されながら孫を懇願される。●
この年にゆうこ結婚?結婚後は両親とは(近所ではあるが)別居となる。
やっちんの結婚・出産もこの後まもなくと思われる(平成19年にはすでに出産)
また、やっちんは結婚後も両親と同居、妻と孫の存在が家族の在り方を大きく変えるきっかけになったと語っている。
◎平成27年・ゆうこ41歳。作中における「現在」。1話のカレーのアク取りのエピソードや、両親に漫画のネタを取材したりするくだりはすべてこの年。
CMの版権収入を得られたのが大きかった
困窮していた家族を救ってくれたのがCMの版権収入だったのは、間違いないでしょう。インタビューによると、そのせいでガードマンの仕事をやめてしまったという負の面もあるようですが、そのおかげで弟は大学に進学でき、卒業後はレントゲン技師に。収入が安定しているからこその結婚・出産だと思われますし、弟の結婚・出産は両親にも非常にいい影響を与えたのも確かだと思われます。
それがもう少し早ければ「家族に土下座」とかはなかったのかな…とか思うとやるせなくなりますが。ただ、あの場面でも奮発したと言って焼肉食べてますんで、名言はされていないものの、すでにCMからの収入は入っていたんでしょうね…。
結局、15話はどう解釈すればいいのか。週刊アスキー編集部の陰謀論説もあるが…。
「ど根性ガエルの娘」は現在はヤングアニマルDensiで連載中ですが、その前は週刊アスキーで連載していました。15話で登場する編集は週刊アスキーの編集です。
ネットでは、15話で台無しになってしまった対談の内容も把握していたアスキー編集が、恣意的な内容のエッセイを作者に描くよう誘導した…という解釈もあるようです。
家族は表面上はうまくいっているが、実際はまだ何の和解もしていないが、そこらへんは誤魔化してしまおう、という内容をアスキー編集が半ば強要した、という解釈ですね。
ただ、個人的にはさすがにこの説は尖りすぎかと思いますね。根拠は以下です。
- 根拠の一つが、作者がツイッターで「1話の時点ですでにこの構想があった」と発言している点。
- また、雑誌が変わったことは、最近この作品を知った読者は知らない(作中ではまったく触れられていません)ことですので、それを知っているのを前提にした話作りはしないだろうという点。
- 完全にハリボテ、となってしまうと、1巻の時点での「家族の再生の物語」という作中でも登場するキャッチフレーズや、「最近のお父さんは仏のように穏やか」というゆうこ自身の言葉をすべて嘘にしてしまう。解釈違いはともかく、嘘をつくようなことはしないのではないか、という点。
ではどういう解釈になるのか、というと、2巻インタビューで作者が語っている言葉に「取材の最中に当時のことを思い出したせいで非常に険悪な雰囲気になったことがあった」という部分があります。この部分の範囲ではないか?というのが私の見解です。
16話を見ればもう少しわかるのかもしれませんが、だいたい掲載ペースは月1ですので、恐らく2月末くらいになるのではないでしょうか。待ち遠しいですねえ…。