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那田蜘蛛山での戦いも大詰め。激戦が続く5巻
どうも、いなかです。
この記事では、作者・吾峠呼世晴のジャンプコミックス『鬼滅の刃』5巻について紹介・感想をまとめていきます。5巻ということでネタバレありです。
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本誌で読んでいてわかっていたんですけど、5巻は約束された神回でしたね。
特に40話「ヒノカミ」の破壊力がやばいです。絵が輝きます。
どこかに感想ぶつけないとやってられないレベルですよ、本当に。
炭治郎と伊之助も散り散りに
4巻のラストで登場した父蜘蛛が、一見デカくて強そうで十二鬼月っぽい雰囲気を醸し出していたんですが(実際強くて炭治郎は十二鬼月だと思っていた)、更に強い奴が別にいたというわけです。
いや父蜘蛛も、今までの敵からすればものすごく強いんですよ。
体が硬さ(技を体で受けても、刃が食い込むだけ)と怪力が強力で、炭治郎と伊之助の二人がかりでやっと互角という感じです。
ところが、父蜘蛛の馬鹿力により炭治郎が吹き飛ばされ、二人は分断されてしまいます。
大木をバットにして、炭治郎をホームランします。パワーだけなら今まで登場したキャラでも最大でしょうね。
残された伊之助は、二刀の使い方を工夫して、一度は父蜘蛛を追い詰めるものの、危機を感じた父蜘蛛は木の上で脱皮。
「脱皮って…元は人間じゃなかったの…?」という感じなんですけど、まあ4巻で善逸が倒した奴なんかは80%くらい蜘蛛だったので、そういう意味では脱皮くらいならまだ人間寄りなのかもしれません。
しかも、一瞬で脱皮したくせに、更にでかく、硬く、しかも速くなるという超パワーアップっぷり。脱皮便利すぎるでしょ。
そこからは伊之助はなすすべもなく追い詰められるのですが、頸椎を握りつぶされる寸前に思わぬ援軍が。
富岡△!
すんでのところで駆けつけてくれた富岡さんは、父蜘蛛を圧倒します。柱の強さが明らかになるのはこのシーンが初なんですが、さすがの強さでした。
脱皮した父蜘蛛は、伊之助の刀があっさり折れるほどの硬さがあったんですが、それをいともあっさりと滅多切りにしてしまいますからね。文字通り、桁違いの強さです。
富岡さんが使うのは、炭治郎と同じ水の呼吸であることも判明。呼吸の種類は何種類あるんですかね?
また、気になるのは、富岡さんに助けられる直前で伊之助が見た走馬灯の内容。
伊之助の母親らしき人が登場しますが、血まみれで明らかに訳有りです。まだ小さい伊之助を崖から投げるような描写がありますが、そのあたりの伏線もいつか回収されるのでしょうか。ああいう野生児に限って、実はなんかいいとこの御曹司という匂いもしますね…。
初の十二鬼月の登場
炭治郎は、父蜘蛛に跳ばされた先で、蜘蛛たちのリーダー格との戦いになります。
このリーダー・累こそが初登場する十二鬼月。
この累の強さと言ったら、さっきの父蜘蛛よりさらに上という。父蜘蛛をナッパとしたら、この累はベジータのごとき強さがあるわけですよ。
累の繰り出す蜘蛛糸は恐ろしいほどの硬さと、生き物のごとき変幻さをもって炭治郎に襲い掛かります。炭治郎は迎撃するものの、糸に刀をあっさりと折られ、瞬く間に絶体絶命の状態に追い詰められてしまいます。
累との戦いは、家族の絆を巡る戦いに
炭治郎は刀を折られても戦意を失ったりはしません。
これだけでもすごいことだと思います。本誌で刀を折られた時には、「唯一の武器を失ってどうやって戦うんだよお!」というのがわたくしの感想でした。
というのも、累の糸は蜘蛛の巣のごとき密度で張り巡らされており、炭治郎が自分の間合いにまで跳びこめる余地はどこにもないように感じたのです。
「あっ富岡さんだね!?富岡さんが来るんでしょ!?」と浅はかにもわたくしは考えたのですが、鬼滅の世界はそんなに甘っちょろくありません。
刀が折られたとはいえ、根本の部分はまだ辛うじて残っています。炭治郎は残された武器である、それを使ってどう戦うか、諦めずに考え続けるのです。かっこよすぎですよね。
ただ、突破口は開けず、炭治郎は次第に糸に追い詰められていきます。窮地に陥った炭治郎を助けてくれたのは禰豆子でした。避けきれないはずの糸を、身を挺して防いでくれます。
そこから、戦いはただの殺し合いではなくなります。
累が、「禰豆子をくれ、自分の妹にするから」と言い出すのです。そうしたら、命だけは助けてやるから、と。
蜘蛛の鬼たちは、本当の家族ではなく、累によって集められたものであることが段々とわかってきます。累は家族の絆に非常に強い憧れを持っており、炭治郎と禰豆子の間にそれを見たのです。
鬼になった妹と共にいる炭治郎、鬼になったのに人間の兄を守る禰豆子。そこに本当の絆があると思ったのです。
もちろん禰豆子を寄越せなどと言われても、炭治郎は拒否します。それどころか、烈火の如く怒ります。禰豆子には意思もある、くれと言われてあげるはずがない、と。
絆に憧れているといいつつ、結局のところ累がやっているのはただの恐怖政治です。集められた鬼たちはもちろん、十二鬼月である累よりは弱い。だから累の言うことを聞いて、家族ごっこをしてくれていた。それだけです。
禰豆子にもそれをやろうというのですから、それは炭治郎も怒りますよね。
だからここからは、本当の本当に負けられない戦いになります。
状況は何も好転していませんが、炭治郎がある技に賭けます。全集中・水の呼吸・拾ノ型「生生流転」。回転しながら繰り出す連撃で、回転を増すごとに技の攻撃力がどんどん増していくという技です。
これにより、糸を切ることにはなんとか成功するのですが、累はすぐに糸の強度は更に上げて対応してきます。そして、生生流転は決して速い技ではありません。回転しながら近づかなければなりませんから。
迫ってくる糸が、今の回転数ではまだ切れないこと、それが死を意味することを、炭治郎は肌で感じ取ります。
父蜘蛛と戦った時の伊之助同様、炭治郎の脳裡にも走馬灯が浮かびます。
思い出したのは、父との記憶。父が絶やさないでいてほしいと言っていた舞、「ヒノカミ神楽」のことでした。父はこうも言っていました。ヒノカミ神楽に大切なのは呼吸だと。正しい呼吸ができれば、どれだけ動いても疲れないのだと。
炭治郎はとっさに、呼吸を「水の呼吸」から「ヒノカミ神楽の呼吸」に切り替えます。
咄嗟の判断が奏功します。理由は炭治郎にもわかりませんが、ヒノカミ神楽の呼吸から繰り出された技には、かつてない威力がありました。切れなかったはずの糸を切ることができたのです。
けれど、累は瞬く間に次の糸を繰り出してきます。そして、炭治郎はもう一旦引いて態勢を立て直す余裕も、自分にはないことを理解していました。呼吸を切り替えたため、すぐに自分が動けなくなることをわかっていたのです。
だから、相討ち覚悟で累の首を狙って刀を繰り出します。
結果的には相討ちになりません。炭治郎が土壇場で新たな技を繰り出したように、禰豆子も新たな力に目覚めるからです。自らの血を爆発させる能力「爆血」。
それが炭治郎を襲う糸を焼き切り、同時に炭治郎の攻撃には最後の一押しをしてくれます。
まさに二人の絆で勝ち取った勝利です。
総評:絆というテーマを扱った累戦が神回でないわけがなかった
「絆」って、もともと「鬼滅の刃」の大きなテーマじゃないですか。
鬼になってしまった妹をなんとかして救いたい、守りたいというのが主人公のそもそもの戦う理由なわけですし。
それと同じテーマを持った累戦がつまらないわけがないんですが、まあ神回のオンパレードでした。
恐怖で絆を支配しようとする累と、累より個の力では大きく劣る炭治郎と禰豆子が、それぞれの絆で累を上回るという。炭治郎も禰豆子も、土壇場で新たな力を発揮させるわけなんですが、それぞれ家族がきっかけになっているんですよ。
炭治郎は走馬灯の中で父から「ヒノカミ神楽」のアドバイスをもらい、禰豆子は意識を失った状態から母の呼びかけで目を覚まし、炭治郎の危機を救います。
わたくし、鬼滅のこういう場面が大好きでして。
累戦に限らず、ちょいちょいこういう場面あるじゃないですか、死者やその場にいないものが、炭治郎や禰豆子を励まして、それが二人の力になったり、そこまで行かなくともほんの少しでも背中を押してくれるような場面が。
例えば一巻では、すでに死んでいるはずの錆兎と真菰が、炭治郎に修行を付けてくれるじゃないですか。最終試験の際にもじっと炭治郎の事を案じてくれている。「俺たちのことはもういいんだ」と。
読むたびに目頭が熱くなってしまうくらい好きな場面なんですけど、これも絆ですよね。
炭治郎がすごくいい人間で、力を貸してやりたくなるようなやつだから、そういうやつの元に絆が集まっていくんだなというのがすごく感じられるのがいいんですよ。ご都合主義にならない説得力があって。
累にしても、倒した後で累の悲しさに触れた炭治郎は、「鬼に刃を振るうことに躊躇いは持たない、けれど鬼であることに苦しんでいるものを踏みつけにはしない」と言って、累のことを庇うそぶりを見せます。
ああ、こういうやつだから、こういうやつの元に絆が集まってくるんだなと、思わずにはいられませんよ。
炭治郎にはこれからも絆を大切にしながら戦い続けてほしいですね!