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「放課後のカリスマ」のスエカネクミコの新作は、ゾンビパニック…ではなく、中世ダークファンタジーもの
どうも、いなかです。
この記事では、作者・スエカネクミコのビックコミックス「ベルサイユオブザデッド」について、未読の方向けのレビューをまとめます。ネタバレは無し(最低限のあらすじ程度)としています。
執筆時点では、まだ1巻が出たばかりの作品です。
中世フランスの貴族モノ+女装王女+ゾンビという、属性てんこもりの作品がスタート
作者のスエカネクミコ先生は、小学館では以前「放課後のカリスマ」という作品を描いておりました。現代を舞台に偉人のクローンが活躍するという内容です。それに引っ張られたのか、「ベルサイユとか言いつつ現代が舞台のゾンビパニックものでしょ?」などと勝手に思い込んでいたのですが、別に全然そんなことありませんでしたね。
舞台は普通に中世のフランスで、主人公はマリー・アントワネットでした。
ただ、本物のマリー・アントワネットはフランスへ向かう途中にゾンビの群れに襲われて死亡、一緒に付いてきていた双子の弟が女装してその代役をするという、「これだけで1本描けるな」という要素を二つも三つも掛け合わせた内容になっています。
普通のゾンビものは、結末はあってないようなものだが…
私自信は正直ゾンビパニックものがあまり好きではなくて。というのも、ちゃんとした結末を迎えることがあまりないじゃないですか。というか、そこを楽しむものではないですよね?
なんというか、いつのまにかゾンビが大量発生して、どこからともなく襲いかかってきて、モブがあっけなくやられてそいつもゾンビになって、焦ってバカなことやるやつもいてそいつもゾンビになって、次はゾンビどこから来るんだろう?的な、ホラーなドキドキそのものを楽しむものですよね。結末は「ゾンビの恐怖はまだまだこれから!」的な感じで(「そんなゾンビものばっかりじゃねーよ」となったらごめんなさい)
今作については、ちょっと、いやかなり毛色が違っています。
そもそも、思ったほどゾンビ出てきません。まあ要所要所で出てきて存在感をアピールしてくれるんですが、パニックになるほどではないですね。「それまでの生活基盤が完全崩壊して、ほとんどの場所がゾンビまみれ」とかそういう感じではないです。
どちらかと言えばもっと中世の権謀術数的な雰囲気で、ストーリーの本筋はあくまで王侯貴族たちのパワーゲーム、ゾンビはそのための小道具、とかそういう雰囲気があります。
今のところ、ちゃんとストーリー漫画してる…と思います。とりあえず普通のゾンビものとはかなり違う展開になりそうです。登場人物も多いですからね。しかもみんな、耽美なイケメンか美女揃いです。背景も含めて、そこらへんの画力はほんとにさすがです。ただ、ホラーのノリなのは間違いないので、そのうちちょいちょいドロップアウトしていってしまうんですかねえ。
ストーリー漫画のまま行くのか、パニックものに落ち着くのか
好みとしてはなるべく前者のまま行ってほしいですが、最後はバーっとヨーロッパ中にゾンビが拡散してオシマイ、となる気もしていて。続きが気になるところですね。
もともと作者の作風としては、どちらかというと雰囲気とか勢い重視の作風なんですよね。画力がものすごく高いから、それで十分作品になるんです。ただ「放課後のカリスマ」でそのイメージの脱却を試みた感じもあるので、今回もある程度、構想なり勝算なりはあると信じたいところ。逆説的ですが、これだけテーマをてんこもりにしてしまうと、そうじゃないと仕掛けられないハズ。
今後の展開に期待します!