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エッセイだから、着地点は明確になってるって思うじゃないですか…
どうも、いなかです。
この記事では、作者・大月悠祐子のヤングアニマルDensi「ど根性ガエルの娘」について、未読の方向けのレビューをまとめます。ネタバレは無し(最低限のあらすじ程度)としています。
執筆時点では、2巻まで発売されている作品です。また、ヤングアニマルDensi自体はは無料のwebコミックサイトなので、直近の話はここから読めます。(執筆時点では15話まで公開中)
特に、公開されたばかりの15話があまりにもショッキングすぎる内容となっています。
基本的には、「ど根性ガエル」の作者の「娘」が描く、事実をもとにしたエッセイ形式の作品
作者の大月悠祐子は、かつては「かなん」という名義でギャラクシーエンジェルなどのコミカライズを手掛けた作家ですが、父親はかの「ど根性ガエル」の作者・吉沢やすみです。だからタイトルは「ど根性ガエルの娘」なんですね。
内容はエッセイ形式なんですが、まあこの吉沢やすみ先生の生き様が壮絶なこと。かつてはど根性ガエルで一世を風靡するものの、その後は極度のスランプになり、漫画が描けなくなってしまうんですね。
ど根性ガエルのヒットで、一時期は大金を手にしていたのですが、スランプのときにギャンブルで貯金はすべて使い果たしてしまいます。
また、数か月に及ぶ失踪の時期もあり、家庭が崩壊していたとのこと。
一度は人気作を生み出した作家さんですので、次回作への周囲の期待も大きかったんでしょうね…。
マーケティング戦略?1巻ではかなり「再生された家族」をフィーチャーしているが…
1巻の時点では、1話こそ破壊力のあるシーンもありますが、あとは比較的マイルドな構成になっています。作品のテーマとして、「再生」がキーワードになっているんですが、破壊される前のエピソード(ど根性ガエル執筆時の話など)も多いので。
ただこれは、1巻の時点でヘビーな話を載せ過ぎると読者がついてこないことを見越しての、戦略的な配慮でしょう。そしてそれだけではなく、作品を先鋭化させるために必要な構成だったというのも、読み進めるうちにわかってくるのですが。(このあたりは重大なネタバレになってしまうので、このような書き方に留めます)
2巻からは本当にすごいエピソードも出始めてきて、ここからが作品としての本領発揮と言えます。まあ、そこまで読んだ方なら「とんでもないエピソードだな…」と思いつつ一気に読んでしまえると思いますが。
もう怖いもの見たさの世界なんですよね。ジャンルはエッセイなんですけど、内容はホラーなんですよ。社会派ホラー。「ウシジマ君」なんかと同じノリの話になっていきますから。
ちょっと時系列がわかりにくいところがありますが、意識してのもの…なんでしょうか。非常に凝った構成の作品になっていますので、どこまでが計算なのかちょっと推し量れないんですよね。
15話で、既存の漫画作品の枠を完全に超えた
平たく書くと、15話で大どんでん返しが起こりました。
人間って、自分の想定してない角度からの攻撃にはほんと弱いですよね…。読んでいて心からそう思いましたよ。
「ど根性ガエルの娘」は本当に緻密な作品で、ただ重い話のエッセイというわけではなかったです。とにかく15話まで読んでいただければ、と思います。
また、この記事も合わせてどうぞ。弟さん視点でのインタビュー形式となっています。
【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第八話:「ど根性ガエル」吉沢やすみと練馬の焼肉屋
「ど根性ガエルの娘」から読んでいただきたいのですが、多分、記事を読むと余計になにがなにやら訳が分からなくなると思います。その混沌を楽しんでいただけるよう、お祈りしております。
[追記]出来事を整理できるよう、時系列順にまとめてみました
ところで、この作者はこんな環境で「ギャラクシーエンジェル」やら「Piaキャロ」やら描いていたわけで、ほんと~に凄いですね…。もうアニメ版のGA見ただけで泣いてしまうかもしれません。