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ハルオは本当にただのゲーム馬鹿なのか?
どうも、いなかです。
この記事では、作・押切蓮介のビッグガンガンコミックス「ハイスコアガール」より、主人公ハルオについての考察を書きます。
ハイスコアガールと言えば、作中で様々なゲームが出てくるにも関わらず、ゲーム会社の許可を取っていなかったことが問題となり、連載ストップ、アニメ化の話も立ち消えに…と、一時期では悪い意味で話題になってしまった作品です。
しかし数年の時間がかかったものの、ゲーム会社と出版社は和解。それに伴い連載も再開しています。単行本ベースでは、すっごく良いところで止まっていましたので、本当に嬉しかったです。
立ち消えになったアニメ化の話も、連載再開後の売れ行き次第では復活もあるのかな…とか勝手に思っています。
さて、そんなハイスコアガールですが、作品の見どころと言えばやっぱり主人公・ハルオの濃すぎるくらいのゲーム語り…と、ハルオをめぐる恋愛模様。このハルオ、作者の画風もあるんですが、絵の上では決してイケメンではございません。基本的にゲームしかやってないですし、性格はマイペースで一方通行(小春の弁より)。
でも、作中では少なくとも二人の美少女が、ハルオのことを憎からず思っている…という矛盾。
本当に、だたのマイペースで一方通行のゲーム馬鹿がモテていいのか?単に主人公補正で済ませてしまっていいのか?と思い、少し真剣にハルオの魅力について考えてみました。
確かに、ネガティブな面もあるが、それを補って余りある「誘うスキル」
マイペース、一方通行…作中でハルオがこう評されるのは、中二の新年で小春に偶然会う場面。
ハルオは近所のゲームショップの初売りセールに向かう途中、小春は家のおつかいの途中でした。二人は家が本当に近所らしくて、ちょいちょい出くわす場面があります。それなのに小学校は別というのが謎ですが…。丁度学区の区切りだったんでしょうか?
ゲームショップに付いてきた小春が「興味がある」と言って手に取ったのは、SFC版モータルコンバット。ハルオは「来い日高!そのゲームの本物の良さを伝えずにはいらんねぇ!」と言い、強引にゲーセンに連れて行きます。
結局、この後はモータルコンバットを小春に紹介するものの、その後にプレイした対戦ゲーム(サムスピ)でのプレイスタイルがあまりにも陰湿だった挙句、対戦相手がキレてリアルファイトに発展…という展開で、一時的に小春の好感度がガタ落ち、という回です。
ケンカするハルオを置いて帰る小春は、道すがら上記のような罵詈雑言をハルオに向けます。まあ、この回については仕方ないですね。フォローしようがないほどハルオが悪いです。
強いてフォローするのであれば、ケンカを仕掛けてきたのは相手からです。それどころか、ハルオ自体はケンカはおろか、イライラして物にあたるような場面もありません。負けたときはよくイライラしていますが…。
ただ、ハルオがダーティなプレイをしているのは、作中では本当に稀です。この時と、あとは第一話で晶の30連勝を阻止するために堂々と待ちガイルを使ったときくらい。
特に第一話の方がインパクト強すぎて(作画もかなりアレでほんとにただのモブのクソガキの蛮行にしか見えない)、読者のハルオに対する印象がかなり悪いというのはあると思います。
プレイスタイルについても、第一話は小六、小春と正月偶然会ったのも中二ですし、ハメて勝てるのであればハメるという考えになるのも仕方ないと思いますね。年齢を考慮すれば、特別ハルオが陰湿というわけではないかと。
しかも、中二以降はハルオ自身も晶を意識して、クリーンなプレイでも勝ちきることを意識していますので、ハメ技などダーティなプレイは激減しますし。
むしろ大事なのは、「来い日高!そのゲームの本物の良さを伝えずにはいらんねぇ!」と女子に躊躇なく言える胆力。
中二でコレ言える奴はそれだけで凄いと思います。少なくともわたくしは、どんなに自信のある分野でも言えなかったでしょう。
この記事を書くにあたって、改めて作品を読み返してみましたが、ハルオは誘うスキルがハンパ無いんですよ。
飯行こうぜとかほんとに絶妙なタイミングでさらっとぶち込んできますからね。
これ小六時代なので、精肉店で買い食いっていう微笑ましいもんなんですけど、誘うスキルはこの頃からすでに顕在。
家出した晶を数時間かけて見つけた時も、さらっと飯に誘っています。(すでに終電を逃していたため、その後ビジネスホテルで一泊するも、特に何も無し)
晶や小春を、異性としてあまり意識していないからこそできることだとは思いますが、この年代だったらむしろその方が受けがよさそう。この「誘うスキル」、単体でモテにつながってもおかしくないほど、非常に強力なスキルです。
「語り」が上手い。決して一方通行ではない
好きなものの話になるとつい饒舌になってしまう、というのはハルオに限らず、オタク界隈の共通する部分でしょう。程度の差はあると思いますが。
で、肝心のハルオの「程度」はどうなのかというと、スゲー紳士なんですよ。早口になったり、まくしたてたりとか一切ナシ。
本当に淡々と、ゲームの特徴を語っていきます。んで、言外に「これが俺が好きなもんなんだよ」という強いメッセージを感じるという…。
「語り」については、子供らしさはカケラもなく、もっと重厚な成熟具合を感じさせるほど。
上のコマではハルオがやばい顔になっていますが、小春に対してヨコシマな感情を抱いていたわけではございません。PCエンジンという自分が大好きな分野に、小春が食いついてきたのを喜んでいるだけです。
晶なんてセリフらしいセリフは皆無なわけで(ご満悦の時のムフーという効果音か、泣いた時の声くらいしかない)そういう無口な相手に延々と語り続けられるのが逆にすごい。
しかも、晶の表情やしぐさだけで、大体何を考えているか当てていますしね。「もじもじしくさって…ははーん、そこにあるPCエンジンがやりたくて仕方ないんだろう!?」の回など、挙げれば枚挙にいとまがありません。マイペースですけど、空気を読む力は凄くあるんですよ。これでコミュ力無いとは言わせないですよ。
現実に置き換えて考えてみると、例えば趣味のオフ会かなんかで会った相手が、凄い口数が少ない人だったとしましょう。でも、結構楽しんでる雰囲気は出しているとします。そういう人相手に延々と趣味の話語り続けられるか?というところでしょうか。
誰にでもできることではないですよね。
口を出し過ぎない
ここがハルオの憎いところなんですけど、語りは上手い、なおかつ口を出し過ぎないんですよね。(まあ手も出さないんですが)
小春が初めてアーケードゲーム(ストⅡダッシュ)をやったときの反応がコレ。
もちろんきっかけはハルオが強引に誘ったからなんですが(誘うスキルを発動)、いざ始まったらあれこれ口出ししたりしません。初心者の女の子のレバガチャプレイをじっと静かに見ているんです。ここら辺ほんと、年齢に見合わない大人っぽさを感じます。
というか、大人でもなかなかできないことですよね…。わたくしも思い当たる節があります…。
自分のやりたいことに対しては本当に真摯
ゲーム馬鹿だから、ゲームに対して真摯なのは当然…っていうのはフィクションの世界の話。
いやフィクションなんですけど、そこはちょっと置いておいて、現実と照らし合わせてみてほしいんですよ。ちゃんと好きなものがあって、それに真摯に取り組める人間ってそんなに多くないですよね?
もちろんゲームの楽しみ方は人それぞれなので、さくっと軽く遊ぶのがダメというわけではないです。「練習」とか「上達」とかと言った要素をゲームに持ち込むのはガチ勢の発想であって、それが唯一の楽しみ方というわけでは決してない。
ただ、やっぱり好きなものに真摯に取り組めるというのは、それだけですごいことなんじゃないかと。
そういう姿が魅力的に映っても、何も不思議はないですよね。
更にここからがキモなんですが、「晶と同じ高校に行くという目標ができたら、そのために半年ゲームを封印」などといったガッツも見せてくれるんですよ!
ガチ勢のハルオがですよ!?
自分勝手な一方通行なだけのゲーム馬鹿が、ここまでできるでしょうか?いやできない!
晶と同じ高校には受かりませんでしたが、高校のランクをかなり上げたのは間違いない(通知表渡される場面では大体オール1、テストもほぼ0点付近から、勉強を教えてくれていた優等生・宮尾と同じ高校に進学)です。半年間はマジで勉強してたんですよ。
いざ受験に向かう日の朝のやりとり。いい息子すぎるでしょ!こいつほんとに中三?
結論としては、多少でもゲームに理解のある女子からは『モテて当然』
改めて読み返したら、モテエピソードのオンパレードで、むしろモテて当然だなと思いました(小並)
なるべく1巻の最後のエピソード以外で行きたいなーと、書く前はぼんやり思ってたんですけど、全然ありすぎてネタに困ることはなかったです。
むしろ「高校に入ったあとは早朝バイトでゲーム代を捻出、しかもバイト代の半分は家に収めてた」「晶のためだけにRPGツクールでゲームを作ってスーファミごと貸してあげた」「初めて行った渋谷で地元のゲーセン常連連中と意気投合」など、6、7巻の胸熱エピソードをあまり入れられなかったのが残念。
そこらへんはまた、単行本ベースでレビューするかもしれません。もしくは小春がいかにいい女かを語る記事を書くか。
とにかく結論としては、ハルオは確かにマイペースで一方通行な部分もありますが、基本的には極めて善良で真摯な男だということです。
そして、ゲームが大事ではありますが、全てではない。他の人間に対しての思いやりもある。
多少でもゲームやる女子から見れば、魅力のカタマリのような男ですよ。
いや~改めてアニメ化してほしいと思いましたね~。できれば2クールで、原作完結と同時にアニメ完結を希望します。そろそろ物語も佳境なので、できなくはないと思うんですよね。