「飯」×「将棋」のコラボが面白い!「将棋めし」をレビュー

作者・松本渚 将棋めし1 巻より
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「将棋」と「めし」を足して2で割らない良作

どうも、いなかです。

この記事では、作者・松本渚のMFコミックス「将棋めし」について、未読の方向けのレビューをまとめます。ネタバレは無し(最低限のあらすじ程度)としています。

執筆時点では、1巻が発売されたばかりの作品です。

将棋も漫画も今は「めし」がキーワード

作者である松本渚は、前作も将棋ものの作品「盤上の詰みと罰」を出しておられて、これが非常に好きな作品でした。で、今作は将棋×めしと言うことで、「そりゃ最近はご飯食べる系流行ってるけどさあ…ちゃんと将棋メインでやってほしかったな…」と、正直最初はがっかりしていました。

読んだらものすごくおもしろかったです。

すみませんでした。読んでなかったら後悔するところでした。

1巻の巻末にも書かれていますが、今は将棋もニコ生などで非常に中継の場が広がり、同時にファンの間では棋士が頼むご飯やおやつも見どころの一つだそうですね。

そして、漫画界は空前の飯ブーム。クレしんのひろしがご飯を食べるだけのスピンオフがあるくらいですし。飯がテーマじゃない作品でも、どっかで一回は飯ネタ入れとけ的な風潮すらあります。

だから将棋×飯×漫画の相性はいいんですよ。本作も、将棋×めしが違和感なくコラボする素晴らしい作品となっていました。

主人公は「玉座」位に挑む女性のプロ棋士

1話は、主人公の女性プロ棋士・峠なゆたが玉座というタイトル戦に挑む場面から始まるのですが、この時点で「え、これほんとに1巻?」と思って3回くらい確認してしまいました。

というのも、女性のプロ棋士は史上一人もいないんですよね。

将棋ものに女性が出てくる場合はまず説明が入る鉄板ネタなんですが、将棋界は男女の力量差にかなりの壁があって、プロの壁を破った女性はまだいません。創作の世界でも滅多にお目にかかれない存在です。これだけで作品のテーマに出来るほどの存在を、何の説明もなくあっさりと、しかもタイトル戦に出してしまったのです。

正直、これだけでやられたなと感じました。

恐らくですが、「普通に女性がプロ棋士を目指すサクセスストーリーを出しても受けない」という判断がどこかのタイミングであったのだと思います。

将棋モノで売るには、追加のプラスアルファが必要、という方針なんでしょう思い返せば、前作の「盤上の詰みと罰」も、そういう意識が強い作品でした(主人公は記憶が一ヶ月分しか保持できない、一種の記憶障害)。なので、作者はデビュー以前からそういう考えがあったのかもしれません。将棋漫画は大好きだし描いていたい、でも、将棋だけでは漫画の世界は戦えない、という考えが…。

1巻を読む限り、そのプラスアルファとして「めし」を選んだのは正解だと思います。

5話と6話が特に秀逸

各話ごとに将棋的なテーマがあり、それと飯を絡めていくのが基本的な流れになります。

最初の方の話は、だいたいなゆた自身の対局がらみの話。で、「休憩中に頼む飯も勝負の一部!」というノリのなゆたが、じゃあ何を頼んでいこうか、と一悩みし、食事休憩後もその飯から力をもらって対局に挑んでいきます。

そういう話も決して悪くはないのですが、特にいいと感じるのは5話と6話の、なゆたが対局しない回なんですよね。

5話は、将棋を最近好きになった女の子とご飯を食べる回。

作者・松本渚 将棋めし1 巻より

たまたま将棋の名所を訪れていた、将棋ファンの女の子(小動物的な可愛さがある)に対して、一緒にご飯を食べてあげるというファンサービスの回ですね。この漫画のテーマを象徴するかのような回です。

作者・松本渚 将棋めし1 巻より

このページにすべて集約されてますよね。将棋は真似できないし、理解が及ばないところもあるけれど、ご飯なら真似できる。

さらにこの回は、ここ以外にもテーマがありますので、ほんとに見どころ満載の回です。この回のためだけでも買う価値があるとさえ思いますね。

6話は、なゆたが竜王戦の解説に呼ばれる回。

作者・松本渚 将棋めし1 巻より

この竜王戦・第5戦ですが、現竜王はなゆたの兄弟子、挑戦者はなゆたの同期でもある友人ということで、なゆたとしてはどちらも応援したいというタイトル戦。そこらへんの縁もあって解説に呼ばれたのかもしれません。

基本的に、なゆたが女子のプロ棋士であることはガン無視され続ける(この世界では女子のプロ棋士はそこまで珍しい存在ではないだと思われます)のですが、この回ではようやくそのあたりに(メインのテーマではないにしても)焦点があたります。

この回は、女流棋士と女子プロ棋士が会話するという、創作の世界でも本当に稀なシーンがてんこ盛りなんですよ!稀というか、もしかして初ではないか、とさえ思います。

回のテーマとしては、女性プロと並んだ場合の女流棋士の存在意義、とかそういう部分が焦点ですね。要は女流棋士である赤兎馬プロのコンプレックスの回なんですけど、「競技者のコンプレックス」って本当に大好物のテーマなので、読んだときはものすごくテンションがあがりました。

ただ、女流棋士と女子プロ棋士の違いがわからない人にはちょっとハードルが高い回になってしまっているかも、というのが懸念事項なんですよね…。雰囲気で感じ取れるレベルにはなっているかなと思うんですが。

ついでになゆたの家族関係も多少明らかになり、キャラクターに対してさらに愛着が増す回となっております。赤兎馬プロも普通に可愛いですしね。

コミックフラッパーの看板として長続きしていただきたい作品

前作が全2巻なので、まずは3巻…というところなんですが、緩く長く続いていただきたいと心から思いますね!まあ、このご時世なんで、受け皿の雑誌が無くなる可能性も決してゼロはないのですが。ちなみに掲載誌はコミックフラッパーです。

最初の数話こそ(特にカラーページで)なゆたの作画に若干苦しんだ部分も見受けられますが、後半は作画も安定して普通に可愛いですし、誰にでもおすすめできる作品になっています。

将棋ファンには間違いなくおすすめ。また、「将棋作品は将棋のルールや戦法がよくわからんくて敬遠してしまう」という方も、「めし」の部分で十分楽しめると思います。

総じて、良作に仕上がっていると思いますよ!

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