雑誌移籍の顛末・後編
この記事では、作者・大月悠祐子のヤングアニマルDensi「ど根性ガエルの娘」19話のネタバレありレビューをします。
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あっさりアニマルへの移籍が決まったわけではなかった
18話のラストで、アニマル副編集長のO野木さんが「続きはぜひウチで!」という力強い言葉を決め顔で言って、雑誌移籍のお話はお終い…という感じかと思ったのですが、引き続き19話も雑誌移籍のお話でした。
あっさり移籍が決まったわけではなかった、という部分や、アスキー編集を一方的に悪者にしたくなかったとか、そういう部分をもう少し掘り下げたかったのかもしれません。
あとはやっぱり、11話12話引き上げの部分ですかね。
18話の時点では、「描きたくないことを描かなくてはならないから提出しなかった」という意味合いに感じていましたが、そういう感情論ではないよ、と。
あくまで、作品の続きを描くための行動だということですね。そして、自分の勝手な行動だという部分。その辺を強調しておきたかった…という意思を感じました。
アスキーから2巻を出してしまったら、その続きを描く可能性はゼロになってしまう。可能性をゼロにしないために、2巻は出さない。
この時点ではアニマルへの移籍は決まっていません。それどころか、移籍のために動き出すことすらまだできていない状態でした。
けれど、出版社から見れば作品の連載にしても、単行本の発売にしてもスケジュールがありますので、作家の一存で原稿出さないの判断を出すのは、完全に作家の勝手。
作中では、「裏切り」という表現が使われています。
ただ、今まで正直あまりいい部分もなかったアスキー編集さん、最後は1ファンとしての感情で応えてくれます。
上にも書きましたが、この編集さん、今まであまりいい描き方をされてこなかった。「ど根性ガエルの娘」をエッセイと謳いつつ、結論ありきのエンターテインメント的な作品作りに拘っているような部分がかなり強調されていましたからね。
まあその辺は、編集もサラリーマンですし、アスキーとしての方針もあるでしょうから、やむを得ない部分もあったのだとは思います。不人気作品だったようですし、テコ入れも必要だったと思いますしね。
ただ、この編集さんに、最後(になるかはわかりませんが)このような見せ場があったのは、よかったと思います。
個人的な好き嫌いの部分になりますが、なるべくどのキャラにも、ある種の救いのような部分があった方が、読んでいてほっとする感じがあって好きなのです。
特に「ど根性ガエルの娘」は、作品の構造的に救いがあまりない、というか救いだと思っていたものが別に救いではなかったりすることが後から明らかになったりするので、今回はある意味では「らしくない」回でしたね(笑) でも好きな回です。
他の編集に掛け合ってみたが、なかなか相手にされなかった
読者はヤングアニマルに移籍したことをすでに知っているので、このあたりの描き方はなかなか難しかったかと思われます。
アニマル以外の雑誌編集からはボロクソ言われていますが、個人的には登場する編集は、ちゃんと作品読んでんのかと思いますね。
まあわたくしが所持しているのはアニマル版なので、アスキー版はまた違う編集になっているのかもしれませんが、「1巻でキリよく終わってる」は正直どこ見てんだよと。
アスキー版の1巻にどこまで収録されたかはわかりませんが、12話までで2巻ということは、1巻はせいぜい7話くらいまででしょう?(アニマル版は6話)
7話っていったら父が母と出会って結婚して娘と息子ができました、っていう、せいぜい「エピソード0」くらいの部分までですよ。
家族の破壊と再生とか、これっぽっちも関係ない。まだ順風満帆な時期じゃないですか。
清掃員の仕事を頑張ってるエピソードもありますけど、あれもまだ子供が小さい時期の話。高校生の娘のサイフからお金盗むエピソードはそれよりもずっと後です。
作品としての演出の部分もあると思いますが、リアルであの反応だとすれば「なんだかなあ」という感じです。
その点、結果論の部分もありますが、アニマル副編集長のO野木はまさに慧眼でしたねえ。
イケメンすぎる。
その後の、「1巻はぜんぜん売れなくて」「あっハイ 知ってます。でもそれをこれから売るのは我々の仕事なので」もクソイケメンですわ。
それで実際、ある雑誌では打ち切りだった作品が、今これだけ話題になってるんだから、敏腕すぎますよね、O野木再生工場…。
まさに漫画の世界ですわ。
満を持して大島永遠先生が登場
後半では、アニマル版のラストに追加された対談のお相手、大島永遠先生が登場。
エッセイ系はあまり読んでいないからかもしれませんが、対談の相手が実際に登場する作品を見たのは初めてです。昔のラノベかよ(笑)
しかも大島永遠先生がくそ可愛いんですよ。
ギャラクシーエンジェルの世界のキャラクターとしても通用するのではというレベルのキャラデザです。
次回は対談の様子になるんですかね…?
大島先生がとても可愛いので、正直それでもいいです!