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むしろ原作ファンこそ必読かもしれない漫画に仕上がっている
どうも、いなかです。
この記事では、ヤングガンガンコミックスの「りゅうおうのおしごと!」について紹介していきます。あと、ついでに私の感想をまとめたりもします。
基本的に未読の方向けで、ネタバレは少なめです。(自分ではあらすじ程度のつもりです)
最初に断わっておくと、私は原作を読んでからコミック版を読んだので、どうしてもそういう視点からの切り口になってしまいます。「単体で読んでも面白いよー」という流れにすることも考えたのですが、いや実際単体で読んでも面白いと思うのですが、やっぱりちょっと説得力に欠けるかなということで、開き直って原作派の目線で行こうかなと。上の見出しにもありますが、原作のファンならなおさら楽しめると思いますので。
ちなみにコミック化が異常なほど早く、記憶では原作ライトノベルの2巻が出る前から始まっていたと思います。出版社サイドからの期待も大きさがわかりますね。アニメ化も時間の問題だと思います。まあ、そのくらいの面白さは余裕である作品ですが。
簡単なあらすじ
主人公の九頭竜八一は弱冠16歳で、棋界のビッグタイトルである「竜王」を獲りますが、直後に大スランプに陥ってしまいます。そんな時、竜王戦を見たことがきっかけで八一に憧れて将棋を始めた雛鶴あいが、押しかけ弟子として八一の元にやってきます。八一はあいに将棋を教えることで、自分も失いかけていた自信を徐々に取り戻していく、という二人三脚の師弟成長物語です。
漫画ならではの演出がいいケレン味を出している
原作も挿絵の使い方は凝っている方だと思いますが、やっぱり絵については漫画版には敵いません。
漫画版は更に構成と作画の二人体制になっているのですが、漫画ならではの表現にもこだわりが感じられます。作者の方もあとがきで描かれておりますが、単純に盤面を描写するだけだと絵が単調になってしまいますので、読者を飽きさせないために対局シーンは特にケレン味たっぷりに描かれています。
原作・白鳥士郎、構成・カズキ
作画・こげたおこげ りゅうおうのおしごと!1巻より
画像はあいの弟子入り試験から。ページ右ではあいのキメシーンである「こうこうこうこうこうこうこうこうこう」が情緒たっぷりに描かれていますし、ページ左では、あいの一打で畳が割れます(笑)
もともとの原作が、取材をきちんと繰り返して、リアルとフィクションを絶妙に混ぜている上に、更にコメディに昇華させているというスーパー緻密ラノベなのですが、それが漫画になることにより絵という大きな武器を手に入れたなという感じです。(心理描写や細かい解説などは、さすがに原作の方が情報量が多いので、作品としてはどちらが上、ということはないです)
歩夢、銀子のファンには特に見どころが多い
歩夢は対局しているところが普通に可愛い
まず歩夢ですが、原作ではJSのみなさんに挿絵や巻頭カラーの枠を奪われてしまって、なかなかイラストになってくれません。ですが、漫画版では登場シーンは全てイラストです。すげえ。
原作・白鳥士郎、構成・カズキ
作画・こげたおこげ りゅうおうのおしごと!2巻より
歩夢きゅんとの中二病対局もこの通り。ライトウィング・ホーリーランスや竜殺!ゲオルギウスの演出もばっちり。歩夢きゅん分をたっぷり補充できますよ!
歩夢きゅんは普通に可愛い(=受けっぽい)ので、アニメ化する頃にはその筋の女子のファンすごそう。
あと、左下のコマに描かれている眼鏡美女はライターの鵠さん。かわいいですねえ…。この人も原作版・漫画版の両方で地味にずっと活躍してるんですよね。
銀子は出番が大幅増。三巻巻末の原作者描き下ろしは必ず見て!お願いだから見て!
私は銀子ファンなので、出番が増えてて正直くっそ嬉しかったです。
全編を通して、銀子のツンデレシーンがフィーチャーされまくってるんですよ。
原作・白鳥士郎、構成・カズキ
作画・こげたおこげ りゅうおうのおしごと!2巻より
「もしやチャンス!?」じゃねーよ常にチャンスだろバカかよ。
おっと失礼しました。つい心の声が…。
まあこのような感じで、漫画の演出としてオリジナルのシーンがぼちぼち入っているんですが、だいたいが銀子関係です。穿った見方をすれば、漫画版は普通に雑誌で連載している漫画ですので、こういうシーンで読者の目を引こうということなのかもしれません。大変結構だと思いますので、もっと思う存分やっていただきたい所存です。
女流名跡のところに行くとことか、今からドキドキが止まりません。さすがにまだしばらく先になるかとは思いますが。
あと、単行本各巻の最後に原作者描き下ろしが入っています。描き下ろしと言っても、主要キャラクターが上で出てきたライターの鵠さんからインタビューを受ける、という内容で、ボリューム的にも数ページです。ただ、そこで明らかになるエピソードなんかもあったりして、読み応えがあります。
1巻の巻末では八一が竜王戦に挑む前の話、2巻では八一と歩夢の対談形式、3巻でいよいよ満を持して銀子が登場します。
で、この銀子のインタビューが本当に素晴らしいんですよ。
ここは本当に読んでいただきたいので多くは書きませんが、銀子がサッカーについて語りまくるという内容です。
原作も基本的には一人称なので、銀子の思考、特に棋士としての思考はなかなか触れられることがないのですが、ここではその片鱗にですが、触れることができます。最初はネタ的に「え、サッカー?」と思ったんですが、読んでいたら内容が自分の中に意外なほどストンと落ちてきて。読み終わる頃にはすごくいい書き下ろしだなと思うようになっていました。とにかく銀子ファンにはおすすめですね。この3巻だけでも読むべきだと思います。
短命なものが多い将棋系作品で、異例の長寿作品になる予感
原作1巻の内容を消化するのに、2.5巻くらいかけていますので、原作のエピソードをすべて消化するなら少なくとも十数巻は必要になります。
今までの将棋漫画はだいたいが3巻程度。長く続いたのはほぼノンフィクションの「聖」、あとは「月下の棋士」くらいでしょうか。本作はそれらに次ぐ、もしくは超える長期連載なる可能性を秘めています。「盤上の詰みと罰」なんかも好きなんですが、2巻ですぱっと終わってしまいましたからねえ。「王狩」も好きだったんですが、発刊が止まってしまいましたし。
「りゅうおうのおしごと!」が長く楽しめる作品になることを祈っております。