卓球×記憶喪失!少年ラケットをレビュー

掛丸翔 少年ラケット1巻より
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自分の過去、そして未来と向き合う卓球漫画

どうも、いなかです。

この記事では、作者・掛丸翔のチャンピオンコミックス「少年ラケット」について、未読の方向けのレビューをまとめます。ネタバレは無し(最低限のあらすじ程度)としています。尚、この記事を書いている時点では8巻まで発売していますが、記事の内容としては1巻中心で、それ以降については「もう少し先にこういう見どころがあるよ」というくらいです。

簡単なあらすじ

主人公・日向伊智朗は、火事で唯一の肉親だった父親を失ったことが原因で、記憶喪失となってしまう。親戚に引き取られて無事に中学に進学した伊智朗だったが、過去がないことが大きな不安になっていた。

そんなとき、偶然握った卓球のラケットに懐かしさを感じる。そして、昔の伊智朗を知り、その後も探し続けていた如月ヨルゲンとの再会から、卓球が自分のルーツの一つであることを知る。

掛丸翔 少年ラケット1巻より

それまでは友人の「イチロー」と言えば野球だろ、との言葉で野球をやっていた伊智朗だったが、卓球部への入部を決意する。彼にとって、止まっていた歯車が動き出す瞬間であった。

記憶喪失のおかげで「経験者なのに素人」という状況が新しい

ヨルゲンの弁によると、記憶を失う前の伊智朗はヨルゲンと同等の強さだったそうです。そしてヨルゲンは小学生の全国大会では優勝しています。対戦したのは小4の時なので単純な比較はできませんが、伊智朗は小学生レベルではかなりの実力者だったと推察されます。

ところが、記憶を失った際には卓球のルールまできれいさっぱり忘れてしまったらしく、道具や用語の類まですべて説明してもらっていました。

卓球部への入部以降、技術についてはどちらかというと「習得する」というより「思い出す」という感じですね。昔の自分がどういうやり方をしていたのか、体の反応を見ながら手さぐりでやっていきます。以前習得していた技術については、技術を意識しさえすればかなり高いレベルで再現できるようです。

つまり、強者と初心者の両方の側面を併せ持っている状態なんですね。

なので、初心者ではありえない速度で強くなっていくんですが、一応の理由付けがあるせいか、あまり違和感を感じないという。血筋とか才能よりは納得できるのではないかと思います。少年の成長物語がやりたくとも、地道な努力のシーンがなかなか受け入れられない昨今では相当新しい切り口だと思います。

あと、「初心者の主人公がド素人的失敗をする」ような場面がほとんどないです。そういう部分が私はあまり好きではないので、地味なプラスポイントですね。

ダブル主人公の対比が熱い

伊智朗が物語の中心なのは間違いありませんが、ヨルゲン(通称ヨル君)視点の場面も相当に多く、実質ダブル主人公体制となっています(8巻時点)

伊智朗は公立中学の生徒で、力のある先輩や指導者とも巡り会えたのは本当に幸運の賜物でした。対して、ヨル君は超エリート街道。中学最強の学校に入学し、指導者、設備、対戦相手にも恵まれた環境にいます。ただ、その一方で部内の争いも非常に厳しく、大会に出られるメンバーの椅子を常に奪い合わなければなりません。

そんな二人ですが、お互いが再戦を強く熱望していて、その目標を叶えるために頑張っています。ヨル君は部内戦を勝ち上がらないと試合にすら出られません。伊智朗はその前の段階での力・知識が不足していますし、チームを最強中学のところまで勝たせなければなりません。

異なる環境での二人の戦いが、本当に胸熱なんですよね。

しかもお互いがお互いのことを思っているというのがもう。アニメ化でもしたら、腐女子に一発で見つかると思います。

個人的にはヨル君が好きなので、このままヨル君視点の展開も減らないでほしいですね!

卓球以外の部分でのドラマにも期待できる

卓球の外で、伏線らしい表現がいくつも残されています。

まず伊智朗の過去ですが、本人が記憶喪失なのもあってほとんど明かされていません。卓球部には所属していなかったようですが、なぜヨル君と同じレベルの強さがあったのか。家族構成にも疑問が残る点があります。

ヨル君も、家族構成に何か抱えていそうな雰囲気。

他のキャラクターも、結構な重い過去を抱えている方が多く、そのあたりのドラマも今後の見どころになりそうです。キャラクターに愛着が湧いてこそのスポ根ですからねえ。

P2ファンだったなら絶対に買うべき作品

かつて、ジャンプに「P2!」という作品がありました。

小柄で可愛い系の主人公が、目の良さを武器に戦う卓球漫画なんですが、作品の雰囲気が少年ラケットとかなり似ているんですよ。

ものすごく好きな作品だったのですが、ジャンプのニーズには合わなかったのか、7巻で打ち切りになりました。この時ほどジャンプの編集部を恨んだことはありません。

少年ラケットはすでに8巻まで発売ということで、とりあえずP2!は超えてくれました。ただ、油断はまったくできません。この数年、卓球漫画というのは数こそ多いものの、長続きしたものはほとんどないからです。

少年ラケットは、弱虫ペダルと並んでチャンピオンの看板になる可能性を秘めていると思います。ストーリーもまだまだこれからで、どんどんお話が膨らんでいく雰囲気です。しかも、まだ中学生。その気になれば、その先を描くことも可能という将来性の高さですよ。

ただ、一方でいまいち話題にならないのも確か。今のところは相当な漫画好きしか知らない作品なのでは。チャンピオンも打ち切りになるときはなります。私はそれをとても恐れています。

かつてのP2!ファンには、悲劇を繰り返さないためにもなんとか買い支えてもらいたいものです。

逆に、少年ラケットファンにもP2!はおすすめですよ。打ち切り作品ですが、伏線は最終回でかなり回収されています。

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