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クイズに燃える高校生たちを描いた青春漫画
どうも、いなかです。
この記事では、作者・杉基イクラの角川コミックス・エース「ナナマルサンバツ」について、未読の方向けのレビューをまとめます。ネタバレは無し(最低限のあらすじ程度)としています。
執筆時点では、13巻まで発売されている作品です。
本だけが友達だった少年が、その知識量を武器にクイズで戦う
主人公の越山識は、背は小柄、地味で控えめな性格、目立つのが苦手で友達も本くらい、という、絵に描いたような地味な特徴の持ち主。ですが、高校で同じクラスになった深見真理に半ば無理やり誘われ、クイズ研究会に入ることになります。持前の知識量がクイズに生かせることを知った識はどんどんとクイズにハマっていき、そのまま全国大会を目指す、というストーリー。
と、高校入学までは何かに熱くなることもなく、静かに本と過ごしていたハズの識くんなんですが、いざクイズという勝負の世界に飛び込んでからは意外なほど熱い心根を見せてくれます。入部の決心までは多少時間がかかるのですが、それからは常に問題に対して貪欲なクイズガチ勢です。
同じく初心者の井上や、きっかけを作った真理と共にお互いに影響を与えつつ、切磋琢磨していきます。で、たまにケンカ的なこともありつつチームとしての結束を固めていくという。体育会ノリではないものの、やってることはスポ根青春モノの王道ですね。
関東勢が出揃ってからが本当の見どころ
作中では、関東の高校クイズ研は互いに交流が頻繁にあり、合同練習やクイズ大会などがよく開かれるようになります。他校のクイ研メンバーもよく練られており…というか、識たちの文蔵が人数は一番少なく4人、他の高校はもれなくそれより多くて、モブキャラ抜いても倍くらいは人数いるのでは?というレベル。
クイ研がある学校は高偏差値の進学校が多いということなのか、中高一貫の男子校が比較的多めですが、女子高(しかもミッション系)クイ研もありバランスは取られています。各校のドラマもかなりしっかりやってくれる上に、高校間の因縁もちゃんと拾ってくれるため、ある意味群像劇的な要素が強くなってきます。
そうするとやっぱり各校に愛着が出てきますし、いざ全国の予選が始まったときに自分の中の盛り上がり方が違いますね。各校のレギュラーを合計するとかなりの数になりますが、それらのほとんどを「主要キャラ」にまで昇華させているのがこの作品の凄さです。
個人的には赤河田の新名がお気に入りです。クイズを解く力はあって面倒見もいい、赤河田の部長なんですが、どうも要領が悪い(というか単なるドジ?)ところがあって、肝心なところでポカするという立ち位置です。こんなんもう応援するしかないじゃないですか。今年三年で最後ということもあり、悔いのない夏にしてほしいですよホント。作中で唯一好きな相手が明らかになっているキャラでもあり、そちらの方も成就してほしいです。
御来屋のヒロイン力が高すぎるという物語の構造上の欠点
識が特に意識しているのが、宮浦の御来屋千里くん。彼はクイズの強豪・宮浦高校でもいきなり上位に食い込む期待のルーキーなんですが、識はその実力を目の当たりにしてからずっと彼をライバル視しています。
そして御来屋の方も、識の知識量は認めていて、自分と同じレベルまで上がってくるのを待っているんですね。互角の強敵になった識と、しかるべき舞台で戦いたいと願っている。なんというヒロイン力でしょうか。すでにアニメ化が決定している本作ですが、出来しだいでは腐女子のエサになる可能性はかなり高いと思います。
というか、ヒロインのはずの真理にいささかパンチが足りないんですよね。そこだけが本当に残念なところです。識と御来屋に限らず、男子同士の掛け合いの後塵を拝しがちです。クイズ馬鹿ヒロインなんですが、基本クイズ馬鹿に囲まれているためにあまり目立てていないのが現状。クイズの能力も、現時点ではまだ発展途上ですし、売りが無い状態になってしまっています。
真理にとって更に向かい風なのは、真理の兄もやたらイケメンで華があること。
この美貌で、クイズの強さも作中最強クラスと来ていますからね…もはや反則でしょう。そんで、中身的にちょっとこじらせたところもあるという。ヒロイン力高すぎじゃね?ってなります。識との絡みはほとんどないんですが。
まあ真理の地味さについては、将来のヒロイン力覚醒のための伏線と思っておくのが吉でしょうか。作品はまだまだ続きそうですからね。
クイズ好きには間違いなくおすすめの作品
クイズをテーマにしている作品は少ない(競技的なクイズを全面に押し出しているのはこれくらい?)ので、クイズ愛好家には間違いなくおすすめできます。
クイズ愛好家までいかなくても、ゲーセンでマジアカが好き(好きだった)くらいでも、十分楽しめる作品。むしろ再熱のきっかけになるレベルだと思います(クイズの構造やパターンなども自然に覚えられるので、なんかやりたくなってくる)。
月刊連載で刊行ペースが遅いというのはありますが、それを補って余りある魅力のある作品です。